若年および壮年期の男性で薄毛や脱毛について悩んでいる方や、自分は遺伝のせいだから脱毛は仕方のないことなんだとあきらめている方がいますが、そうではなくて治療可能な病気が潜んでいるせいかもしれません。AGAつまり男性型脱毛症は頭皮の清潔などの毛根環境ではなく、男性ホルモン(テストステロン)が原因となって引き起こされます。男性ホルモンといわれるアンドロゲンと呼ばれるステロイド系ホルモンは副腎で作られたデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)5%と精巣で作られたテストステロン95%でほぼなりたっており、AGAの説明の際に頻出されるジヒドロテストステロンとは、アンドロゲンが標的細胞である筋肉や前立腺そして毛乳頭や皮脂腺に到着した後に、5α還元酵素の代謝によって構造を変化させられて産生されます。ジヒドロテストステロンは他のホルモンより数十倍もの男性ホルモンとしての作用を持っていますので、ジヒドロテストステロンへと変換されることにより、男性ホルモンとしての作用である毛髪の発毛・育毛・脱毛のヘアサイクル(毛周期)が早くなり、結果的に脱毛症が発症します。
なお、ヘアサイクル(毛周期)が短くなるほど、髪が成長する時間が短くなる為、髪が細く、そして軟毛化していき、最終的には産毛の様な髪の毛しか生えてこなくなります。またヘアサイクル(毛周期)は50回前後でサイクルが終了し、髪が一切生えなくなる状態になります。ここで、毛髪のサイクルが早くなってしまっていることを抑制できれば脱毛症を防ぐことができるとして、アンドロゲンを遮断するもしくは、前出の最も作用の強力なジヒドロステロンを産生させにくする方法が考えられました。アンドロゲン受容体遮断薬は日本では前立腺がんの治療薬としての地位を確立しており、AGAに対する治療薬としては厚生労働省より使用の認可が出ていません。そこで、5α還元酵素を阻害することによりジヒドロステロンを産生させなくすることができる薬剤として、プロペシア(有効成分:フィンペシア)とアボルブ(有効成分:デュタステリド)という内服薬が存在し、それぞれ1日1回を定期的に内服することによって血中濃度が安定し、抗男性ホルモンの効果を得ることができます。
では、このプロペシアとアボルブの2種類の薬剤の違いはなにかというと、5α還元酵素にはi型とii型の2種類が存在し、アボルブその両方共をプロペシアは選択的にii型5α還元酵素のみを阻害することで効果を果たすといった違いがあり、i型5α還元酵素は頭皮だけではなくて全身の皮脂腺に存在していますが、ii型5α還元酵素は主に前頭部の毛乳頭に存在しているということが分かっています。ここで登場しましたアボルブという内服薬は前立腺に存在する5α還元酵素を阻害することを目標に使用されています。前立腺での男性ホルモン作用は前立腺を腫大させて前立腺肥大症という病気を誘発させていきます。これまでの試験結果によると、この内服を長期的に継続することによって30g以上あった前立腺の体積が30%程度減少して排尿がしにくいや、尿のきれが悪いといった症状の改善を期待することができるとされていますが、日本の保険制度ではアボルブは前立腺肥大症にしか使用できません。しかし、5α還元酵素阻害薬よ使用することで実際に抗男性ホルモンとしての効果を得ることができることを見ることができています。
そこで、前頭部に多いとされる種類に選択制をもったプロペシアを長期服用することで実際に脱毛を抑えることができるようになっています。2週間の継続内服でジヒドロテストステロンは80%以上低下するとされていますが、内服を中断すると再度元の値まで戻ってしまい、脱毛・薄毛の症状も再発してしまうので継続内服が大切です。最近ではインターネットを用いた個人輸入でジェネリック薬であるフィンペシアを購入することが、容易に可能となっていますが、プロペシアもフィンペシアもともに薬剤の副作用として内服数週間たってから肝機能障害が発症することがあるので、病院で定期的な採血検査のもと使用されることがよいでしょう。